【「労災かくし」とは?】

怪我や病気が発生した時点では、労災にあたるか白黒はっきりしないことも多いでしょう。 労災認定は後に基準局が行うものです。 隠した時点では、まだ「労災」かは不明で、存在していないわけですから、隠しようがありません。よく考えるとおかしな言葉です。
 ただ、関連がかなり明白なのに、故意に関連を否定したり、それをさらに組織的・マニュアル的に繰り返せば、いわゆる「労災かくし」として刑事責任を追求されることになるでしょう。刑事捜査によって、故意の有無やマニュアルの存在が明らかにされていきます。
  このような事態を予防するのは、実は簡単で、事業主が労働者の病気や怪我を把握した時点で、すべて労働者死傷病報告書(労働安全衛生規則97条)として出 してしまえばよいのです。 逆に、労災といずれ判定されるような病気・怪我に対し、労働者死傷病報告を怠ると罰をうけることになります(労働安全衛生法 120条)。 その一方、労災申請は義務ではありません。 労災申請の主役は労働者で、出す・出さない・取り下げるなどすべて労働者次第です。
 つまり 「労災かくし」とは、労災申請しないことではなく、出すべき労働者死傷病報告書を事業主が故意に出さないことと言えます。
 蛇足ながら、診察医師には、虐待や感染症のような届け出義務はなく、労災だと思いながら具体的な行動を起こさなくても 「労災かくし」の責任は問われません。 しかし、医師の意見で新種の労災が認められるなど、重要な役目があると思います。 
 当院としても、喜んで協力いたします。

参考法令要約;
労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)
第九十七条 事業者は、労働者が就業中又は事業場内における負傷により死亡又は休業したときは、遅滞なく報告しなければならない。
休業の日数が四日に満たないときは,3ヶ月分まとめて報告。

労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)
報告等
第百条 厚生労働省令で定めるところにより、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

第百二十条 次の各号は、五十万円以下の罰金に処する。
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者