【ここが知りたい!健康情報のプライバシーについて】

法令に基づく健康診断による情報収集は、個人情報保護法の例外規定により本人の同意は不要です。
 ただし、検査の値や、それに対する医師のコメントは、会社が知る必要のない情報であるため、取り扱い方については、 労使の合意が求められます(参考資料1 p8)。
 それ以外の健康情報を収集する際には、個人情報保護法により、本人の同意が必要。 例えば労働者の医療機関での受診情報や人間ドックの結果を収集する場 合など。

就業規則活用上の注意点;
 1  健診情報の提供について就業規則へもりこむことは、周知をはかる効果はあるものの、必要ではありません。 一方、それ以外の健康情報の 提供規定は、業務の特殊性にもとづいて合理性、必要性を労使で話しあった上で策定する必要があります(参考資料1)。

2 受診率を100%にするために就業規則で受診を義務づけたい!●~* (参考資料 2)
労働者の受診義務は、義務教育の義務になぞらえて考えるとわかりやすいです。 校則で登校を義務づけようとする校長は、おかしくないでしょうか。
 会社には当然ながら法律を執行する権限などなく、不当な懲罰をすれば損害賠償の対象となる可能性さえあります。
 むしろ双方の利益という観点で、受診したくない理由を傾聴し、健診のやり方の改善を約束したり、労災の早期発見や責任の分担などの話題を出すなどして、 説得を試みるのが望ましい対応と思われます。
 受診義務を定めたのは、例えば受診しないストライキ、受診しなかったことで業務上疾病の発見が遅れた場合などに、会社に過剰な負担とならないようにする ためと考えればよいのではないでしょうか。

3 ストレスチェック情報についての収集制限(参考資料3 安全衛生法で規定されるストレスチェック指針11 p12,13  )
ストレスチェック情報は実施者が保管し、原則として、事業者へは提供されません。仮に労働者へ情報提供の同意を求める場合、ストレスチェックの結果を労働 者が知った後で行う必要があります。
 面接指導を受ける必要があるという情報については、実施者(医師)又は実施事務従事者が、 同意の有無を確認する必要があります。 これらに従わない就 業規則は違法となります。

参考資料:

厚生労働省 『事業場における労働者の健康情報等の 取扱規程を策定するための手引き』2019年3月  (https: //www.mhlw.go.jp/content/000497426.pdf)。
p3
Q&A
Q 健診情報の取扱規程を就業規則に記載する方が良いのでしょうか。
A  厚労省の見解: 実効性の確保や労働者への周知を図る上で、 就業規則等に記載する ことが望ましい。
労働者の意見を聴取した上で、策定することがすることが求められます。
p11
Q  法令では規定されていない人間ドック等の健診結果の提供に同意しない労働者がいる場合、 どのように対応したら良いでしょうか (当社においては、 これらの情報を提供することについて就業規則に定めています。 )
A  厚労省の見解
労働者に対し丁寧に説明し、 理解を求めることが必要です。
その上で、 同意しない労働者がいる場合は、 個々に対応を判断していただけばよい。
院長コメント: 労働者と争いになった場合、就業規則自体や運用の妥当性が問われます。 なぜ特別な情報提供を求めるのか、業務の特殊性にもとづいて説明 する必要が生じます。 また罰がバランスを欠いていなかったかも問われます。 厚労省の見解は、「はじめやさしく言ってだめなら何でもやってよい、任せ る」と言っているのも同然で、人権意識が疑われるだけでなく、なんの役に立たないと思われます。 今一度、情報収集の目的と必要性を再検証してみましょ う。


労働安全衛生法(健康診断)
第六十六条  事業者は、労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。
5  労働者は、健康診断を受けなければならない。ただし、他の医師の行なう健康診断を受け、証明する書面を提出したときは、この限りでない。


「心理的な負担の程度を把握するための検査及 び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(略称 ストレスチェック 指針)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000082591.pdf
根拠法令:労働安全衛生法 (心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第六十六条の十 事業者は、心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
7 厚生労働大臣は、必要な指針を公表するものとする。

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