【コロナ関連の罰則に要注意】

新型コロナに関する罰則は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(新型インフル特措法)と、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に定められている。
 命令の後には反則金、 勧告の後には強制がついてくる。 感染症法では、体を押さえつけて行うような強制検査(16,17条)も準備されているが、 コロナは適応外(26条2)。 しかし、コロナでも有症者は、反則金つきの検査命令(15条8)と強制入院(19条)はある。 無症状者の検査協力は努力 義務(15条7)つまり、本人の意向次第。 コロナで強制入院させられた場合、通常の行政不服申立はできない。

新型インフル特措法
 まん延防止・緊急事態宣言下での営業は、それぞれ20万、30万円の反則金が発生すること、 土地・物資の強制収用(発生時、緊急事態時)、立入りによる帳簿・書類の強制検査が定められていることに注意が必要だ。
 罰則は、76〜80条まであり、
76条(緊急事態時) 物資の強制保管に違反した場合、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金
77、78条(発生時、緊急事態時) 協力要請・命令、土地・物資の強制収用に関する立入検査を拒んだ者は、三十万円以下の罰金
79条(緊急事態時) 営業制限命令違反に三十万円以下の過料
80条 (まん延防止時)営業制限命令違反に二十万円以下の過料
    (発生時、緊急事態時)協力要請・命令、土地・物資の強制収用に関する報告拒否に二十万円以下の過料
を定めている。 

感染症法
 コロナ検査で陽性となると、医師には罰金つきの報告義務があり、職場 の消毒、仕事禁止、陰性になるまでの強制入院、通常の葬式ができなくなるといった影響があることに注意が必要だ。 また、会った人に症状が出た場合、反則 金つきの検査命令書面が来る可能性がある(第15条八項、第81条)。 無症状者の検査協力は努力義務(第15条七項)。
 第26条2項は、新型コロナに対する法の範囲を規定しているので重要ポイントである。 第19条が適応と規定されているので、入院勧告に従わないと行政職員によって身体拘束された上、強制入院(19条)となる上、反則金までかかる(80条)。
 感染症予防法の罰則は、第67〜83条まであり、73条は秘密漏洩、74条は検疫違反、77条は届出、検疫調査、感染者の従業、消毒、遺体、立ち入りなどの違反で罰金50万、80条は強制入院違反で反則金50万、81条は有症者の調査拒否で反則金30万を定めている。
 残りの第67〜72、75、76、78、79、82、83条は病原体の保持に関する罰、反則金について定めている。 

以下、条文要約

新型インフルエンザ等対策特別措置法 条文要約

新型インフル特措法は、発生時、まん延、緊急事態の章立てになっている。
第三章 発生時における措置(第十四条―第三十一条の三)
第三章の二 まん延防止等重点措置(第三十一条の四―六)
第四章 緊急事態措置(第三十二条―六十一条)

(対処方針の基本は公表、 詳細な戦略の公表は不要)
第十八条 政府基本的対処方針を定め直ちに、公示する。

(検疫所長による病院・診療所・宿泊施設の強制使用)(発生時)
第二十九条 検疫所長は検疫をされるべき者が増加し、停留施設不足の場合、病院若しくは診療所若しくは宿泊施設が同意をしないとき、同意を得ないで、使用することができる。 公用令書を交付して行なう(第七十一条)。

(営業時間変更命令)(まん延防止時)
第三十一条 六月を超えてはならない。延長可能。
営業時間の変更その他必要な措置を要請できる。応じないときは、命令し、公表することができる。
住民に対し、特定の業態にみだりに出入りしないことその他協力を要請することができる。

(土地の強制収用が可能)(発生時、緊急事態時) 
第三十一条の三(発生時)、第四十九条(緊急事態時) 臨時の医療施設を開設するため、所有者の同意を得ないで、土地等を使用することができる。 公用令書を交付して行なう(第七十一条)。

(外出自粛・営業制限/停止命令)(緊急事態時)
第四十五条 緊急事態において居宅から外出しないことその他協力を要請することができる。
学校、福祉施設、興行場などの停止要請することができる。応じないときは、命令し、公表することができる。
命令に違反した者は、三十万円以下の過料(第七十九条)

(物資の強制収用)(緊急事態時)
第五十五条第三項
緊急事態措置の実施に必要な物資の売渡しを要請することができる。 応じないときは、強制収用できる。
違反行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金(第七十六条)
公用令書を交付して行なう(第七十一条)。

(公用令書の交付)
第七十一条 検疫のための病院・宿泊施設の強制使用(第二十九条第五項)、第 四十九条並びに第五十五条第二項、第三項及び第四項(同条第一項に係る部分を除く。)の規定による処分については、特定検疫所長、特定都道府県知事並びに 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、政令で定めるところにより、それぞれ公用令書を交付して行わなければならない。ただし、土地の使用に際して 公用令書を交付すべき相手方の所在が不明である場合その他の政令で定める場合にあっては、政令で定めるところにより事後に交付すれば足りる。

(土地や物資、営業所での帳簿、書類の立入検査)(まん延防止時、緊急事態時)
第七十二条 知事は、協力要請・命令、土地等の強制使用(第四十九条)、又は 物資の強制収用(第五十五条)に必要な場合、営業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査することができる。 立入検査の権限は、犯罪捜査のために認 められたものと解してはならない。(裁判所の令状は不要)
違反行為をした者は、三十万円以下の罰金(第七十七条)
立入検査に協力しない場合は二十万円以下の過料(第八〇条)

(以下は罰則)
(緊急事態時)
第七十六条 物資の強制保管(第五十五条第三項)の違反行為をした者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(発生時、緊急事態時) 
第七十七条 協力要請・命令、土地・物資の強制収用(第七十二条)に必要な立入検査を拒んだ者は、三十万円以下の罰金に処する。
第七十八条 法人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

(緊急事態時)
第七十九条 営業制限・停止命令(第四十五条)違反をした者は、三十万円以下の過料に処する。

(まん延防止時)
第八十条の一 営業制限命令 (第三十一条の六)に違反は、二十万円以下の過料。

(発生時、緊急事態時) 
第八十条の二 協力要請・命令、土地・物資の強制収用(第七十二条)による報告を拒んだときは、二十万円以下の過料。


感染症予防法 条文要約
新型コロナは、「新型インフルエンザ等感染症」の扱いになっている。
全数把握する感染症は、1〜5類感染症、指定感染症(現在指定なし)、 新型インフルエンザ等感染症(新型コロナ)に分類される。  第26条2により、新型コロナへの適応範囲が定められている。 強制入院、行政不服審査法不適応(19〜25条)という点で、1類感染症と同じ扱いだが、 1類にある強制検査・健康診断・就業制限(16〜18条)は適応外。

(政令で本法適応範囲を定める)
第七条第一項 
指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、次条、第三章から第七章まで、第十章、第十三章及び第十四章の規定を準用する。

(調査協力努力義務と、有症者への調査命令)
第十五条 1,2 知事、大臣は、 感染症全般の調査ができる。
3、6 感染症全般の患者、無症状者の検体の採取を求めることができる。
一、二、三 新感染症の患者、無症状者の検体
四、五、六 動物の検体
七、八、九、十、十一、十二 所持病原体
7 調査に協力するよう努めなければならない。
8  知事、大臣は 、感染症まん延の防止のために(第五十三条)、感染症の所見がある者「特定患者」が調査に協力しない場合、命ずることができる。
 9 前項の命令は、最小限度でなければならない。
10 命令は、書面による。

(強制検査)
第十六条の三 1,2 知事、大臣は、まん延を防止するため必要があると認めるときは、一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ患者、無症状者(第十五条第三項)に検体提出を勧告することができる。
3、4 知事、大臣は、勧告に従わないときは、検体採取を強制できる。
5 都道府県知事は、勧告をし、検体採取する場合は、書面により通知しなければならない。差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
6 検体採取措置の後相当の期間内に、書面を交付。
7 厚生労働省令で定めるところにより、検査を実施。
8 厚生労働省令で定めるところにより、報告。
9 大臣は、自ら検査を実施することができる。
10 知事は、検体採取措置、検体検査のため他の都道府県又は大臣に協力を求めることができる。
11 大臣の検体採取措置、検体検査でも書面を交付。

(強制の健康診断)
第十七条 知事は、まん延防止のため、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し医師の健康診断を勧告することができる。
2 勧告に従わないときは、健康診断を強制できる。

(就業制限)
第十八条 知事は、患者又は無症状者の届出を受けた場合、本人へ、届出内容を通知する。
2 前項に規定する者は、厚生労働省令で定める期間従事してはならない。
3 前項の休業者は知事に対し、対象者でなくなった確認を求めることができる。
4 求めがあったときは、確認をしなければならない。
5 知事は、本人へ届出内容通知をしようとするときは、あらかじめ、保健所に置かれた協議会の意見を聴かなければならない。
6 知事は、すみやかに通知内容を協議会に報告。

(強制入院、移送、退院)
第十九条、二十条
第二十一条 専門病院又は診療所に移送。
第二十二条一 病原体を保有していないことが確認されたときは、退院させなければならない。

第十九条 一類感染症のまん延を防止するため入院を勧告することができる。
2 患者の理解を得るよう努める。
3 従わないときは、強制入院できる。
4 第一項及び前項の規定に係る入院の期間は、七十二時間を超えてはならない。
5 強制転院させることができる。
6 入院期間を合算した期間は、七十二時間を超えてはならない。
7 強制入院させたときは、遅滞なく、保健所協議会に報告しなければならない。
第二十条 第十九条で入院した者について、さらに十日以内の入院を勧告することができる。
2 従わないときは、十日以内の期間を定めて、強制入院させることができる。
3 強制転院させることができる。
4 強制入院は、十日ずつ何回でも期間延長できる。
5 延長しようとするときは、保健所協議会の意見を聴かなければならない。
6 患者に意見を述べる機会を与えなければならない。
7 患者は、代理人を出頭させ、自己に有利な証拠を提出することができる。
8 聴取書を作成しなければならない。

(最小限度の措置)
第二十二条の二 まん延防止のための強制検査・入院措置(第十六条〜第二十一条)は、必要最小限度のものでなければならない。

(都道府県知事による調整)
第二十二条の三 知事は、一類感染症のまん延により当該都道府県知事の管轄する区域の全部又は一部において感染症指定医療機関が不足するおそれがある場合、保健所、医療機関に対し、総合調整を行うものとする。

(書面による通知)
第二十三条 書面通知の規定(第十六条の三)は、健康診断の勧告・措置、入院の勧告・措置について準用する。

(都道府県知事に対する苦情の申出)
第二十四条の二 強制入院している患者は、苦情の申出をすることができる。
2 口頭で申出するときは、職員にその内容を聴取させる。
3 知事は、誠実に処理し、結果を苦情の申出をした者に通知。

(行政不服審査法を適用しない)
第二十五条 入院期間が三十日を超えるものは、大臣に審査請求(再審査請求及び再々審査請求を含む。以下この条において同じ。)をすることができる。
2 審査請求があった日から起算して五日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
3 入院の期間が三十日を超えないものが、大臣に審査請求をしたときは、入院した日から起算して三十五日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
4 知事に審査請求をし、入院期間が三十日を超えたときは、直ちに、事件を厚生労働大臣に移送。
5 前項の規定により事件が移送されたときは、はじめから、厚生労働大臣に審査請求があったものとみなして、第三項の規定を適用する。
6 大臣は、裁決しようとするときは、審議会の意見を聴かなければならない。
7 入院の措置に係る審査請求については、行政不服審査法は、適用しない。

(一類感染症の条文を新型コロナに準用)
第二十六条 第十九条から第二十三条まで、第二十四条の二及び前条の規定は、二類感染症の患者について準用する。
2 強制入院、行政不服審査法不適応(第19条〜第25条)の規定は、新型インフルエンザ等感染症(新型コロナ)の患者について準用する。(強制検査・健康診断の16、17条は適用外)

(新感染症の強制入院)
第四十六条 知事は、厚生労働省令で定める新感染症の所見がある者に対し十日以内の期間を定めて入院を勧告することができる。
2 従わないときは、十日以内の期間を定めて、強制入院させることができる。
3 強制転院させることができる。
4 十日以内の延長ができる。更に延長できる。
患者に意見を述べる機会を与え、代理人を出頭させ、自己に有利な証拠を提出することができる。 聴取書を作成しなければならない。

(新感染症を一年以内に限り、一類感染症とみなす)
第五十三条第一項
 国は、新感染症まん延の防止のために、新感染症の所見がある者を一年以内のに限り、一類感染症とみなして第三章から第六章まで、第十章、第十三章及び第十四章の規定を適用。

(以下罰則)
第六十七条 一種病原体等をみだりに発散させて公共の危険を生じさせた者は、無期若しくは二年以上の懲役又は千万円以下の罰金に処する。

第六十八条、第六十九条、第七十条、第七十一条、第七十二条 病原体等を所持関係(第五十六条) 十年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

第七十三条 医師が、感染症の患者の治療に際して知り得た秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 公務員が、秘密を漏らしたときも、同様とする。

第七十四条 医師以外の人が 患者の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 検疫でみつかった患者(第十五条の三第一項)の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第七十五条、七十六条 病原体の保持関係(第五十六条)、百万、三百万円以下の罰金。

第七十七条 届出義務違反、検疫調査、感染者の従業、消毒、遺体、立ち入り違反、感染媒介動物の輸入で違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。 以下関係条文
第十二条 医師の届出
第十三条 獣医師の届出
第十五条の二、三 検疫調査
第十八条 患者及び無症状病原体保有者の就業制限
第二十七条 患者がいた場所の消毒命令
第二十八条 ねずみ、昆虫駆除命令
第二十九条 衣類、寝具消毒廃棄命令
第三十条 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬。
第三十一条 汚染水の使用・給水制限又は禁止
第三十二条 汚染建物への立入り禁止
第三十三条 患者がいる場所の七十二時間以内の交通遮断
第三十五条 立ち入り調査
第四十四条の四 新型インフルエンザ等感染症は、二年以内に限り、一類感染症とみなすことができる。
一年以内の延長ができる。更新できる。
第五十条第一項、第五十三条第一項 新感染症に一類感染症と同じ措置ができると規定
第五十四条、第五十五条第一項、第五十六条 病原体媒介動物の輸入禁止、検疫、輸入動物の安全証明書
 
第七十八条 一種病原体をみだりに発散する第六十七条の罪は、日本国外でも適応(刑法第四条の二)。
第七十九条 病原体所持法人の罰金刑。

(強制入院拒否は、五十万円以下の過料)
第八十条 強制入院しなかったときは、五十万円以下の過料。

(有症者による保健所の調査拒否は、三十万円以下の過料)
第八十一条 感染症の所見があり、第十五条第八項による調査命令を受けた者が、調査を拒んだときは、
三十万円以下の過料に処する。

第八十二条、第八十三条 病原体所持に関する違反、十万円以下の過料

(以上)。